冬の川を観察しているとカワガラスを見ることがあります。
チョコレート色をしていて、ずんぐりむっくりな感じの丸い体型をした鳥。
川に点在する石から石へ飛びながら水辺に立ち、積極的に潜水をして水中を歩きつつ水生昆虫などを捕食しています。
川から離れて飛ぶことはほとんどなく、冬の白い風景の中ではよく目立つことから、見たことある方も多いのではないでしょうか。
ダーウィンの『種の起源』では、「特殊に進化した水に潜るツグミ」として紹介されています。
かつては大型のミソサザイとしてミソサザイの仲間とされた説もあったようで、確かにパッと見はミソサザイを大きくしたような姿です。
しかし最近のDNA解析よる研究でも、ツグミに近い仲間のようです。
遺伝子解析などのない時代のダーウィンの観察が正しかったわけですね。
先日の地元博物館での仮剥製作成作業では、そんなカワガラスを作業してました。
作業をしていると……、
羽毛は空気を大きく溜め込むためか何層にもなっていて、皮までずいぶんと“厚み”があるように感じます。
また、他の鳥に比べて皮下脂肪がとても多くて処理がタイヘン。これは個体差なのか、時期的な問題なのか分かりませんが、水温による体温の低下には重要な役割がありそうです。
目にある瞬膜(まぶたのさらに下にある、ふたつめの薄い膜)は特に発達していて、水中メガネの役割を果たしています。瞬膜を閉じた瞬間のカワガラスはちょっと薄気味悪いくらい。
仮剥製作業としても、目の処理が少し面倒です……。
(↓瞬膜を閉じた瞬間のカワガラス)
翼はいわゆる短腕扇翼。同じく水辺を生活圏にしているカワセミなどと同じです。
この翼の形が、水中での水の抵抗に適しているのでしょうか。収斂進化の例と言ってもいいのかもしれません。
収斂進化(しゅうれんしんか)とは・・・異なる別のグループの生物なのに、似たような生活や生態を持つために、似たような姿(形態的特徴)を持つこと。
嘴(くちばし)先端は微妙にズレています。
こんなふうにズレているなんて、今までワタシ知りませんでした。
これは石にへばりついている水生昆虫を捕るのに適しているのでしょうか。
足指にはイボのようなものがたくさんあり、タコのような吸盤状のものが点在しています。
これも、水流の中で水底を歩くための進化と言われています。
様々な身体の形態が生活の仕方で変わる、ということを実感できます。
野外観察と図鑑や文献での知識、というのが知ることの基本ですが、こんなふうに実際に手にとって観察できる機会があると改めて勉強になりますね。
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