古道を歩き、ふるさとを探訪する

私、古道歩きが好きです。
家で文献や地形図・航空写真でアタリをつけ、現地で実際の地形や植生を見ながら埋もれた道の場所を確定させていく「宝探し」的感覚が楽しめるし、その場所の歴史や先人の営み・苦労に思いを巡らせながら古い道を歩く、というのは感慨深いものがあります。

北海道の一部のメジャーな古道(「〇〇山道」など)は、地元有志の手によって復元されて比較的手軽に歩けるようになっている場所もありますが、そんなメジャーどころよりも、もっと、誰も見向きもしない・文献を紐解かないと存在も気づかないような隠れた道や営みの形跡を森の中から探し出す古道歩きが大好物です。

倶知安町(ニセコ)には、国道5号線という函館~札幌間を結ぶ主要な国道が走っています。
当然今の経路は昔の道とは違っている場所が多く、明治時代に倶知安入植のために歩かれた道は今の国道5号線とはズレています。

そんな昔の経路の確定作業のため、10年以上前に、博物館でもらった大正時代の地形図を片手に雪の季節に歩いてみたり夏の季節に歩いてみたり……独り右往左往しながら笹ヤブやクマの恐怖、ハチやらダニやらと格闘しながら”古道”を探していました。
別に、自分のツアーに使おうとか古道を復活させようとかの目的があるわけではなく、いちナチュラリストとして興味があるだけで、探し出す過程が楽しいのです。

確定作業の最後の時には地元のナチュラリスト学芸員を誘って歩き、峠を越えて倶知安町まで通して歩きました。
その時、「いつか、地元町民向けの観察会で歩けるといいよねー」なんて話していたけど、何せ、クマに怯えながらヤブの中を歩く行程です。しかも全長10kmほどの峠越え。
「ちょっと一般向けのツアーコースではないな」と、一般参加者と歩くことは諦めていました。

今年、一部の要望により、道のり・服装・装備を告知した上で参加者をある程度絞った形で、旧倶知安峠を歩きに行くことになりました。
そんなイベントは、地元博物館の観察会「ふるさと探訪」。私も毎年ガイドを務めさせていただいている、地元町民向けの地元の自然を見て知る観察会(ツアー)です。

しかも、倶知安町に初めて入植者が入ったのは、明治25年5月17日。
観察会当日はその133年後の、5月17日。
これは狙ったわけではなく、資料を見ているうちに奇跡的な偶然に気づきました。スゴイ偶然!
(「狙った」と言った方がガイド的にカッコいいんだけど)

▼自然度あふれる林道歩きから

▼道という道はなくなり、ヤブに突入

▼どこに人がいるでしょう?

▼そんな中、突如として橋が!

▼沢も美しい。
当然不快な虫もたくさん飛んでいますが、それが当たり前の自然の姿なんです。虫すらいない森、って気味悪くないですか?

▼午前中を歩き続けて峠を制覇!現在の国道5号線に合流です

▼峠の下を通るトンネルの両方の坑口を一日で見た人はそうそういませんよ

▼途中、私が以前に見つけたスミレサイシンの群落地や……

▼美しい沢へ寄り道。
今までヤブの中を歩いて峠越えしているので、ぐちゃぐちゃな道もへっちゃら。

今回の町の観察会は主催の博物館によって「ふるさと探訪」と名付けられているのですが、まさに、ふるさとの歴史に思いを馳せ、先人の足跡をたどり、地元の本来の自然に目を向ける『ふるさと探訪』となりました。

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