葉っぱの展開がすっかり進んだこの時期は、葉を透過する陽光がキレイ。
個人的には特に、ホオノキの透過具合がお好み。
飛騨高山などの郷土料理で有名な、あの「朴葉味噌」の葉っぱです。
モクレン科の樹木で、葉っぱをはじめ、花も実も、普通よりかずいぶん大きい上、
森の中のギャップのような明るい場所を好むので、なかなか目立ち、一種の存在感を示します。
そんなホオノキ、花をキチンと見てみると、ちょっと不思議なコトが・・・花の姿が微妙に違うのです。
花の中心に円錐状に出ているものは雌しべ。
花は、雌花として機能します。
花が咲いて一日目には、この形で咲きます。
他の花から花粉をつけてやってくる虫を受け入れ、受粉するためのカタチ。
同じ花を次の日に見てみると、根元の部分が開いてきます。これは雄しべ。
花の機能は、雄花に変化します。
他の花へ花粉を運んでもらうためのカタチ。
二日目~五日目くらいまではこのカタチで咲き、その花は寿命となります。
なんのために、こんな面倒なことを?と思って調べてみると、
ひとつの花の中で、雄しべと雌しべを同時に機能させないことで、
同一の花での受粉(自家受粉)を避けているようです。
同一個体での受粉は正常な種子ができにくく、遺伝子異常が起きやすい。
ウイルスなどに対する抵抗力も下がります。
できれば避けたい。
こんな花の仕組みは、「遺伝子の多様性を維持する」ための、ひとつの戦略なのです。
遺伝子の多様性を維持することは、生物にとって永く繁栄するためにとても大事なこと。
人間も “個性” がたくさんあった方が、健全なのです。
ちなみにこのホオノキ、
一億年ほど前に、広葉樹が地球に出現した初期の姿をとどめている、などと言われます。
これは、
・雄しべや雌しべの一つ一つが、“松かさ” のようにらせん状に並び、葉の形を残していること
・蜜を作らずに、香りで虫を誘うこと
などからも、原始的な広葉樹の特徴がうかがえます。
太古の昔から受け継がれ、一億年を生き延びている繁殖戦略は、当たり前のように今年も行われていました。
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コメント
見てみて下さい~。
そうだったのか朴の花。原始的なんですね。明日森で見てみよう。