「虎落笛」

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冬になるとなぜか、風の音が際立って耳に入るような気がします。
そう、あの、
「ぴゅーーー、ぴゅぅぅぅーーーー!」
の音です。
昔話などで、雪に閉ざされたおじいさん・おばあさんの家、の情景で必ず入っているあの音。
個人的には、雪の少ない地方の、冬枯れた寂しげな里山の雰囲気によく合うような気もします。
自然の情緒や移ろいに敏感な日本人は、こんな音にもキチンと名前を付けました。
それがタイトルの「虎落笛(もがりぶえ)」。
虎落(もがり)とは、竹を組んで縄で結び固めた柵のこと。
大きな木でもたやすく登る虎でも、表面がつるつるの竹で組んだ柵は登れずに落ちてしまうことから、
「虎落」の字をあてて、そのような柵を「もがり」と呼ぶそうです。
そんな柵の隙間を抜ける時に鳴る、どこか物悲しい音を、「虎落笛」というワケです。
俳句の世界でも、冬の季語としてこの言葉は使われています。
ワタクシ根が暗いのか、意外とこの音が好きですね。
なんでしょうね~・・・、どういう感覚なのか分からないんですが、いい。
森が鳴る、という不思議な感覚。
しかもそれにちゃんと気がついて、名前までつけちゃう先人たちの自然感覚。
よくないですか?
音楽の世界でも、フランツ・シューベルトが、
「失恋・悲しみ・絶望・憧れ」といった青年の感情を、虎落笛が鳴るようなもの寂しげな冬の情景と重ねあわせ、
「冬の旅」という歌曲集で表現しています。
人によっては、「ドシッと暗い」と感じる歌曲集かもしれませんが、
それがまたまたいいもんで・・・、と感じるワタシはホトホト暗いのか・・・。

こういうことにまったく目を向けるヒマもない、お忙しい毎日をお送りでありませんか?(自戒をこめて・・・)
「自然をみる・楽しむ」ということは、ただ動植物の名前を覚えるだけでなく、
日常のこういったところにも気付いて思いを馳せる、ことにもあると思います。
ちなみに、この虎落笛を聞きたい方は、
大風が吹きつける日に、窓をほんの少しだけ開けっ放しにすれば聞けます。
まぁちょっと風情に欠けますが・・・。

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