前回の「コガラとハシブトガラ」の続編。
知的好奇心旺盛な方からのリクエストです。
今回は識別にクローズアップ、なので、普段のブログでは触れないちょっと細かいところです。
また、本来なら写真をたくさん紹介するのがいいのですが、識別点がよく写っている写真が手持ちにあまりないので、言葉の説明ばかりとなってしまい、分かりにくくてスミマセン。
「そもそもコガラ・ハシブトガラってな~に?」って方は、Google様の画像検索などで見てみて下さい。
また、
「細かいところ、私興味ないもんね~」という人は、すっ飛ばして下さい。かなりの長文ですから。
あくまで “野外観察で” 参考に出来る程度のワタシ的識別点です。
まずは―、
◆頭頂部の光沢。
~これはワタシ的な第一チェックポイント。
・ハシブトガラ=濃黒色で光沢あり
・コガラ=やや褐色味を帯びた黒色で光沢なし
光沢があるように見えるコガラも個体によっているようですが、光沢のないハシブトガラはほとんど見ません。
◆嘴(くちばし)の太さ
~条件が良ければ見えますが、観察時は下から見上げるパターンが多い上、すばしっこい鳥なので判断しきれないことも多い。
・ハシブトガラ=嘴上下に膨らみがあり、がっちりした感じ。光沢もあり、上下嘴の境い目(会合線)が白く見える
・コガラ=基部は特に太くなく、すらっとした感じ。会合線は目立たない
ただ、太陽光の下では嘴が光って見えることもあるので、条件によっては光沢具合や会合線を勘違いします。
(↓写真はハシブトガラ)
◆次列風切の外弁の色
・ハシブトガラ=翼をたたんだ状態ではこの部分の白色部は目立たない
・コガラ=翼をたたむとこの部分が重なって、明らかな白色部となる
(↓矢印部の白色部が目立たない=写真はハシブトガラ)
以上の3点が野外で見るべきポイントのメインですが―、
◆その他
・足の太さ
ここに言及している図鑑がありますが、これは野外でキチンと見えたためしがありません・・・。
しかも、両種が並んでくれれば「太い・細い」が分かるのですが、よっぽどの数を見て比べないと難しく感じます。
・尾羽先端の形
これもまたひとつの識別点で、ハシブトガラは角尾でコガラは円尾とされています。
ただ、常に飛び回っていることが多い鳥なので、じっくり見るのが難しい上、換羽状況や年齢・羽の擦り切れ具合でかなり微妙なポイントかと・・・。
・分布
ハシブトガラは前回投稿のとおり、国内では北海道のみの分布。なので、本州の人は悩む必要はありません。
本州のコガラは特に針葉樹林を好む傾向があります。北海道でも比較的その傾向があるように感じます。
また、北海道でのコガラは標高500m前後の山地域が主な生息環境(藤巻,1990)。
ニセコでも羊蹄山麓の1.5合目あたりからコガラが出現することが多いです。
ただし北海道の冬期では、コガラは低地に下りてきてハシブトガラとごちゃ混ぜになり、これまた厄介。
そして道南では平地でもさえずりをよく聞くような・・・。
どういう環境が最適な生息環境なのか、ワタシ的には判然としません。
ハシブトガラも針葉樹林に多いですが、針葉樹林の林縁の広葉樹林(針広混交林)なども含めて、とても幅広い環境でよく観察できます。
北海道ではハシブトガラが広葉樹林に、コガラが針葉樹林に多い、との報告もあるようですが、混在していることも多く判断が難しい。
また、興味深いところで、
コガラは枯れ枝などをほじくるような行動をよくするのですが、ハシブトガラはほとんどしない、ともあり、両種とも幹の割れ目などに貯食をよくするとあります(Hafton,1956)。
繁殖期もハシブトガラの方が少し早めなので、さえずりが聞かれだすタイミングを気にして歩けば両種の違いに気づき易く、混在しているのかどうなのか、分かるかもしれませんね。
前回の投稿のように、さえずりが明らかに違いますので、これがやっぱり一番の識別点です。
(ちなみに、地鳴きでの両種の違いはいまだ詳しく研究されていないようです)
何より、鳥に限らず植物なども難しい識別は総合判断が大事です。
ひとつの識別点だけで判断すると大きく勘違いすることもありますので。
(そんな識別法を、“当て込み” “決めつけ” と言います←分かっていてもやっちゃうんですよねぇ)
まぁとにかくムズカシく、あまりこだわるとドツボにはまります・・・(経験者は語る)。
ただ、こんなコムズカシイ奥深さにも、自然をみる楽しさのひとつがあるのは間違いありません。
(参考文献)
・五百沢「日本の鳥550」
・河井「北海道野鳥図鑑」
・永井「野鳥図鑑670」
・藤巻「北海道鳥類目録改訂4版」
・中村「日本野鳥生態図鑑」
・山階鳥類研究所研究報告 安部・黒沢「ハシブトガラとコガラの形態上の相異について」
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