「トラツグミの越冬」

トラツグミは、北海道では基本的に夏鳥です。
夏にだけ見られる鳥は「夏鳥」、冬に越冬のために渡来して冬の間だけ見られる鳥は「冬鳥」、一年中見られる鳥は「留鳥(りゅうちょう)」といいます。
つまり今時期に見られる鳥は、留鳥か冬鳥のカテゴリの鳥、ということになりますね。
ただこの ”冬にいるかどうか” は、どの地域をどのくらいのスケールで考えるか、によって微妙に変わります。
日本中の鳥を網羅しているような鳥図鑑であれば、基本的に中部地方あたりを基準に書いてあることが多いし、”北海道の鳥”といった図鑑であれば、北海道全域を基準に書いてあります。
ウグイスは、北海道の図鑑には「夏鳥」と書かれ、日本全国をカバーする鳥図鑑には「留鳥」と書かれるのはそのせいです。
鳥は季節移動(渡り)をする種類が多いのですが、この移動の一番の大きな理由は『冬のエサ資源の確保と、夏(繁殖期)のエサの量』の問題から。
冬の間にエサ資源の確保が出来るのなら、渡りなんぞせずにそのまま越冬をして、その地域に留まる個体もいるのです。
それなら、『(その地域だけでみれば)留鳥じゃん』ということになるのですが、そんな限られた小さなスケールで個々の鳥の生態を判断していったらその鳥全体の移動生態が見えずらくなるので、ある程度の大きな地域スケールで判断するものなんです。
なので、ニセコと雪の少ない噴火湾方面などでは、それぞれの鳥の越冬状況には違いがあるもので、一概に「夏鳥に属する鳥だから、北海道の冬ではいないよね」とは言えないものなんです。
近年の温暖化の影響(?)や降雪の年変動、除雪環境の向上のせい(?)か、冬のエサの確保が出来る鳥もいて、ひとつの種類の鳥の中でも渡りをする個体と渡らない個体、という話しをよくするくらいですし。
で再度……トラツグミという鳥は、 ”北海道では” ”基本的に” 夏鳥です。
トラツグミに関しては、以前から一部の地域で越冬している個体が確認されていたので、北海道の図鑑には『夏鳥(一部越冬)』という記述になっています。
前置きが長くなりましたが、今年、知り合いの日本野鳥の会-室蘭支部の方から『トラツグミの越冬個体がいた』という興味深い話しを聞きました。
私自身は冬にトラツグミを見たことがなかったので(ニセコでは完全に夏鳥だと思っています)、「へぇー、いるんですね」なんて話しをしていたのですが、先日噴火湾方面に行ったら、やっぱりいました。
一羽だけしか確認出来ませんでしたが、ひとりぼっちで越冬しているのでしょうか。
わが道を行くチャレンジ精神が素晴らしい(笑)
図鑑をきちんと勉強して識別が出来るようになることも楽しいことだし大事なことですが、その識別力や知識を使って、足しげく現場を見て歩いて知ることに自然を見る本当の楽しさがあります。
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