2月26日に北海道日高の静内でフクジュソウが咲いたようです。例年よりも二週間ほど早い開花だそう。
自然暦
ある一定の時期になり、鳥がさえずりを始めたり花が咲きだしたりすると「季節が進んだなぁ」と感じます。
こんな「動植物の行動や状態の変化と季節の移り変わりの関連性」を『フェノロジー』と言います。
自然の暦(こよみ)ですね。
私は”自然暦”なんて言って、かつて私のホームページで「ニセコ自然暦」なんてコンテンツがあったことを覚えている人もいるでしょうか。
これからの季節、日本で一番有名であろう自然暦の便りが届きます。
桜。
桜前線で春を感じるのはまさに、日本人の自然に対する暦感覚でしょう。
ソメイヨシノは元々ひとつの個体から全国に広まったのでそれぞれの遺伝子は同じであり、となれば環境(気温などの花を咲かせる要因)が同じであれば必ず同じタイミングで咲くはずです。一本一本のサクラには、個性による開花のばらつきはないのです。
それなのに開花にばらつきが出る、ということはその地域の環境要因(主に気温)に由来するわけで、それを桜前線という形で、南から北への開花の進行を表現しているのです。
また、「啓蟄」(2022年は3月5日)なんていう言葉でも、「虫が春の訪れを感じて土から出てくる時期」として自然の営みと暦を関連付けている例もありますね。
記録すると見えてくるもの
自然ガイドを生業にしている人、自然好きな人は是非、この自然暦を意識して集積するのがおすすめです。
私はニセコを中心に、様々な自然暦を記録するようにしています。
鳥たちの初鳴きや初認日、様々な花の開花日、積雪量の変動、道路の開通状況…100近い項目を15年以上記録し続けています。
ある意味ここまで長くやっていれば、ひとつの資産のようになります。
そんなことをしていると、いつ・どこに行けば鳥や花に出会える(出会えない)というのが自然と頭に浮かび、整理され、フィールドワークの確度があがります。
これってガイド的には日々のツアーでたいそう役立つスキルだし、何より季節を感じられて楽しいものです。
ポイントは「記録」すること。
人間の記憶なんて曖昧なものだし、都合の良いように記憶が書き換えられることもしばしば。
例えば、『今年のこんな大雪、初めてだ!』なんて言っていたら、実はつい3年前はこれ以上だった…なんてことはよくあり、これって、毎日の除雪の大変さから過去の記憶が上書きされちゃうパターンです。
だから、「3月中には咲くよね~」みたいな 曖昧な”記憶”ではなく、きちんと”記録”を残すこと。
これ大事。
また、フェノロジーの情報を積み重ねることによって、地域同士の違いも見えてきます。
場所が違えば気温も違い、雪の量も違い、季節の進み具合も違ってきます。そもそも緯度も違えば当たり前のこと。そんな当たり前の違いを説得力・納得力を持って認識出来ていることは、ただの記憶に基づいた見解とは大きな開きが出てきます。
こんな情報を収集し様々な考察や予測をしていく作業って、意外と楽しいものですよ。
(ただし…あまりこんな数字的論理を切々と語ると、少しメンドーがられるのでご注意を・笑)
さらにそれが10年・20年と積み重なった膨大なデータとなれば、地域の環境・気候の変動といった自然環境を専門的な目で考察出来るかもしれません。(個人的には最低でも20年くらいは積み重ねないと、きちんとした考察は難しいかな、と思っていますが…)
今ならまだ
3月に入り、北海道でも春の便りが届く季節が近づいてきました。
ニセコでもこれから4月にかけて、
- 3/20頃…ホオジロ初認
- 3/30頃…ヒバリ初鳴き
- 4/17頃…ウグイス初鳴き
- 4/20頃…カタクリ開花
- 5/6頃…サクラ開花
(ヤブキ記録より抜粋)
などなど、変動の大きな季節に入っていきます。
少しひと手間かけて記録してみると、来年以降、自然を理解していく上できっと役立ちます。
今年は”記憶”から、”記録”をしてみたらどうでしょう?
何から何まで正確に記録を取ろう、なんて思うと続かないので、軽い気持ちでまずはいくつか記録を残しておくだけでもいいかと思います。
プロガイドさんや花好き・鳥好きの方は、より深く自然を理解するためにもおすすめです。
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