双眼鏡を使いたければ、使わない

今年は鳥の勉強を始めてみよう」とか「双眼鏡を買ったばかり」といった、鳥見初心者向けの記事です。

「鳥が見られるようになりたい」と自分の双眼鏡を購入して、「これでさぞかし見えるだろう」と意気揚々と森を歩いてみたら、「今までよりも見られなくなった…」という人がいます。

ワタシ的に感じている、鳥見あるある、です。

そもそも双眼鏡を使うためには、道具としての使い方(目当て・目幅調整・視度調整など)を知り、対象を素早く拾うための一定の練習が必要です。
素早く拾えるようになるためには、スズメやカラス相手に練習してみたり、電信柱などのてっぺんに鳥が止まっている”つもり”で、ぱっとその場所に双眼鏡を合わせる練習なんかが有効です。
ただし、住宅街や町中で練習すると他人の家を覗いている不審者と間違われます。ましてや独り言なんて言いながら練習しないように。通報されます。

だけど練習をしたからといって、森の中で手当たり次第に双眼鏡を使って見ることは私のツアーではおすすめしていません。

双眼鏡を通して見れば大きく見える、には間違いないけども、そこには「視野が狭くなる」「遠近感が狂う」「大きさの比率が混乱しやすい」「大空の中で飛んでいる鳥だとか、枝が混み合った森の中ではそもそも対象を拾うのが難しく、ピントも合わせにくい」「それ(鳥)しか見なくなる」などのデメリットもあります。

一方で、双眼鏡を使わなくとも得られる情報はたくさんあります。
細かい部分は見えなくても――、

  • その鳥のシルエット
  • おおよその大きさ
  • 飛び方や止まり方などおおまかな行動
  • 周囲の環境・地形
  • 意外とすぐ近くにも別の鳥がいたりして……

こんな様々な情報は、鳥が遠くても、動いてばかりでも、枝が混み合っていても、逆光でも、裸眼で見ることが出来ます。
人間の眼は超高性能にできていて、人間の眼に匹敵するレンズなどこの世にありませんから。
常に双眼鏡を通して見ようとするとここいらの観察がすべてすっ飛び、結局双眼鏡で拾うことも出来ないままいつの間にかいなくなってる…なんてことになりかねません。

鳥見のコツは、鳥を見つけたらまずは出来るだけ裸眼で追いかけ、これらの様々な情報を観察するのがおすすめです。双眼鏡はまだ使っちゃだめ。

そんなことをしている間に、鳥が近くに寄って来てくれたり、枝が被っていない見やすい場所に止まってくれたり、自分が見やすい位置にそっと動いたりして、双眼鏡を使うべきタイミングを探ることが大事です。
こんなことしているうちにたとえ逃げられちゃっても、おおまかな情報は観察しているので、その地域でキチンと鳥を見ている人に聞いてみれば結構な確度で種名を教えてくれるでしょう。

だから、
双眼鏡を使いたければ、使わない
なのです。

双眼鏡の正しい使い方

そして、今こそ使うべきタイミングだ!と思ったら、すかさず双眼鏡を構えて見てみましょう。ここで ”双眼鏡で対象を拾う練習” の成果が問われます。
ここぞ!の時のためにも、ポケットに入れておかずに首から下げておくことも大事です。

双眼鏡を通して見られたらラッキー。おめでとうございます。とても嬉しいでしょう。

そうなれば、キチンと見るべきポイントを押さえながら観察することで名前を確定することが出来るかもしれません。それもまた嬉しいこと。

また、見ながら頭の中で名前を決められたら、そこで双眼鏡を下ろさずに、あと30秒見続ける癖を付けましょう。
名前を決めることだけが目的ではありません。というか、名前が分からなくても構いません。
双眼鏡を通して面白い行動を発見出来たり、鳥の表情まで見えたりすることもあって、そんな発見に鳥見の楽しさがあります。

こんなふうに、「使うべきタイミングを見極めて、使える時に使うこと」を意識したほうが、効果的に双眼鏡を使いこなすことが出来る上、きちんとした観察が身に付きます。


ちなみに私はツアーの際、お客さんに双眼鏡を貸し出すことはあっても、私自身は双眼鏡を基本的に持ち歩きません。

双眼鏡で見やすい場所に立ち、双眼鏡を構えて観察するのは、すべてお客さんです。
ガイドが見やすい場所に立って観察して「あれは○○ですねー」と言っても意味がありません。
ガイドはもっと早い段階で識別出来ている上で、お客さんを最も見やすい位置に誘導し、実際に見られるようにアドバイスをして、観察してもらうのが役割ですから。
そのためにも、出来るだけ双眼鏡を使わずに観察し、識別出来るようにしてきました。
そんな意識で鳥を見続けていると、意外と裸眼だけでも得られる情報ってたくさんあるものです。
そのくらい人間の眼は優秀なんです。(私の眼は老眼ですが)


さらにこの ”使うべきタイミングを見極める意識”、鳥の写真を撮る時にも大事なコツのひとつかと思っています。

私が鳥の写真を撮る場合は、背景や光、距離感、ピント精度などの機械的な部分を考えつつ、レンズを向けても撮れないと判断したらレンズを向けません。レンズを向けることで鳥にプレッシャーを与え、逃げられることも多いし。(「レンズ効果」と言っています)
撮れるタイミングを見極める意識がとても大事なんです。

そういう部分では、双眼鏡もカメラも一緒です。

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