きのこハンドブック

先日、青森県庁と奥入瀬自然観光資源研究会(おいけん)の連名で、

『奥入瀬渓流 きのこハンドブック』(河井大輔著)

が届きました。

奥入瀬は風光明媚で稀有な自然環境が広がる自然景勝地で、そんな中で数多くの自然ガイドさんが活躍していて、コケ観察を始めとした新たな自然ツアーの形を模索・チャレンジしている土地でもあります。

本を手にしてまず最初に目を奪われる、『めくるめく、きのこの世界』感の表紙。
博物館的雰囲気を感じさせます。

掲載されている写真の数々は、図鑑的記録写真としても情景的感性写真としてもピカイチです。
ある種、図鑑らしくない(?)デザインと相まって、ひとつの読み物としてのハンドブックとなっています。

解説部分では、多くのキノコ図鑑にあるような「細かい識別点」や「食べられるか・毒なのか」よりも、様々な「おはなし」が掲載されています。
「おはなし」といっても、専門的な切り口であったり、生活史であったり、筆者の印象であったりと様々で、すべての”きのこ”がフラットに、奥入瀬渓流の風景を形作るひとつの要素の物語として語られています。

また、図鑑によくある「用語集」とか「フローチャート」もなく、巻頭で ”現地で識別出来ない難しさと奥深さ” が語られています。食べられようが不適だろうが、ひとつの自然の情景物としての ”きのこ” が解説され、そういう意味ですべてがフラットなんです。

図鑑が「個を詳細に見分け・違いを見出すための書籍」とするのなら、この本は図鑑じゃありません。
しかし、人が自然のモノに興味を持つためには、「違いが分かるようになる」という図鑑的側面とは別に、「個の”くらしやれきし”といった中身が分かる」という側面もとても重要です。「人となりを知る」ということですね。
それぞれの種名(和名)表記で、片仮名よりも先に漢字表記をメインに持ってきているところを見ても、そんな想いを感じさせます。(動植物名は、学術的名称として使う場合は片仮名で表記することになっています)

そんな既存の図鑑とは違った、「人となりを知る」ための図鑑(ハンドブック)です。
※とはいっても、奥入瀬渓流内であれば写真との絵合わせで十分に図鑑的役割を担えるでしょう。

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また、この奥入瀬エリアでは、今までに数多くの自然本が出版されています。
しかも、景観・樹木・野草・シダ・コケなど様々な分野において、奥入瀬で見られるほとんどを網羅するような掲載種数。

こんなこと、他地域では類を見ないこと。
これだけひとつの地域のあらゆる分野を科学と感性の両側面で見つめる、ということはなかなか出来ることではありませんから。浅学な分野も多々ある上に発信力の少ない私なんぞ、お恥ずかしい限りです。

奥入瀬を形作る様々な自然の要素を網羅的に知ることが出来る、ということを通して、自然を見ようとする人が増え、知ろうとする人が増え、その過程を面白がる人が増えることに繋がる。それが筆者の願いであると感じます。

同時に、これらの書籍をもとに個性のエッセンスを加え、生の声で伝えるという自然ガイドの役割が重要になってくるのでしょう。

これらの本を手にすることで、その地域の自然を誰でもいつでも知ることが出来ます。
本を読むだけでもアリですが、実際に現地に行って肌で触れた方がもっといいに決まっています。
是非、訪問前に目を通してから、奥入瀬を訪れてみて下さい。
本を片手に歩いてみるのもいいですね。ガイドツアーに参加してみるのは、なおいいかと。
きっといつもと違った目で自然を見つめることが出来るでしょう。

そしてこのような本やガイドを通じて、見ようとする人が増え、知ろうとする人が増えることが、自然の保全に繋がることに間違いありません。

コメント

  1. 外崎雄斗 より:

    全さん、こんにちは!
    奥入瀬に行ったことはありませんが、奥尻島と何か通ずるものがある気がしたので、まずは全巻買ってみました。
    届くのが楽しみです。
    なんだか奥入瀬にも呼ばれている気がしてきました。笑
    そして6月の全さんの研修会もとっても楽しみです。

    • Ftre-zen Ftre-zen より:

      おぉ、それはそれは。いい本なんで、間違いないですよ(笑)
      予習をした上で、ぜひいつか行ってみて下さい。いろいろな意味で、勉強になるかと。
      6月はお会いできるのを楽しみにしています。どこか案内してねー。

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